つか岩石

高校生の頃、沢木耕太郎の「深夜特急」に心酔していた。

アジアを旅する若者の話。

サラリーマンとして、出社初日。

主人公は、バスで、アジア横断を決行する。

まあ、よくある話なのかも知れない。

けれど、作家の文章力により、どことなく寂寥感をともなう、リアリティ溢れる素晴らしい作品となっていた。

何度も、何度も、読み返した。

そして、いつか、大人になったら、そんな先のわからない未知なる旅に出てみたい、そう思っていた。

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前回の、あずにゃん乗り遅れの反省を、生かして、「おやつはあらかじめ準備」

今回は、本当に本当に、準備万端。

終電2本前のあずにゃんで、余裕の信州へ。

準備していた、カフィーのおともにと、車内販売のアイスを注文。

「少し、時間をおいて、召し上がってください」

そう言葉を添えて渡されたアイスは、岩石のように凍っていた。

280円の超高級アイス。

余裕の旅行行程が、気持ちを大人にさせる。

ふふん。280円?へいちゃらさ。

ブリリアントな汽車の旅。

前回とは一味ちがう。そう、私は成長したのだ。

どうれ、少し溶けるのを待って、このアイスめを食したあと、

アラームをセットして、少し休むとしよう。

茅野までは、2時間はかかる。

そう考えながら、ほんの少しまどろんだ。

本当に、ほんのすこしまどろんだのだ。

andoro01.jpg・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

聞きなれない地名の、アナウンスが流れる。

ん。

まどろみながらも、時計を見やる。

アイスを買ってから、もう下手をすると、3時間近く、時が流れている。

280円のアイスは、足元に転がっている。

「しまった。乗過ごした!」

血の気が引く。

ここは、どこだ?とにかく、降りよう!

アナウンスされた駅へ、飛び降りる私。


その駅は、聞いたこともない名前だった。

ただ、静寂な暗闇が私を迎えた。


高校生の頃、先のわからない未知なる旅にでてみたいと、そう思っていた。

しかし。

信州の冷気は、私を歓待しているようにも思えた。

空から、舞い降りる白雪。

不思議と、すこし愉快な気持ちになる。

夜分22:30 私の望むべくもない、残念な旅が始まった。

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