事件簿 ブログトップ

嫌な予感しかしない。 [事件簿]

このままではラチがあかない。

非常灯の元へ走り、屈強そうなドアに体当たりをするもビクともしない。

ふむ。

まだ、あの異様な女の人は、エレベーターのそばをうろうろしている。

私は意を決して店員さんにチクることにする。

「行動が尋常でない人がいて、エレベーターの乗ることができない。」

「警察を呼びたいのだが・・・・」

私は、女性店員に告げる。

すると、その20歳くらいの店員は、得心した顔で、

「あー、はいはい。大丈夫ですよ。行きましょう。」

とサラリと言い放つと私を先導した。

「大丈夫ですよ。あの女の人はいつも居ますから。」

エレベーターの前に到着。

あの奇異な女の人が、「ぐるるるるる」とこちらを見つめ「ぶつぶつ」つぶやしている。

その女性店員は涼しい顔をしている。

その奇異な光景の原因である「異様な女性」に一瞥もくれない。

そして、「まるで何も見えていないかのように」私をエレベーター内へ。

エレベーターは無事1階のフロアへ。

ひそやかな月光に、妙に安心感を覚える。

帰宅しながら、考える。

おかしい。

もし、あのような異様な女性が、1台しかないエレベーターの前をいつも徘徊しているのだとしたならば、

営業妨害もはなはだしい。お店もなんらかの手を打つはずだ。

そして、あの女性店員の落ち着き払った態度。

そしてなによりも、あの異様な女性はいつからあの場所にいたのだろうか?

服装も乱れていたし・・・。

考えれば考えるほど嫌な予感しか浮かばない。

真相を究明する勇気はない。

ただもう2度と、あのイタリアンレストランに、私が足を運ぶことはないだろう。

怪異に巻き込まれるのはまっぴらごめんである。

ちあふ.jpg




出口のないファミレス [事件簿]

山のように積まれたお仕事も、手をつけなければ始まらない。

そんなこんなで、晩御飯の時間は遅くなる。

午後9時。

百貨店の4階にあるイタリア料理のレストランへ。

ミラノ風ドリアとパスタ。

食後にミネラルウォーターをクイッとやる。

さあ家に帰って、タイバニでも観よう。

そう思って店を出るとエスカレーターが封鎖されていた。

どうやら下のフロアは午後9時で閉店。

帰宅するには、4階の隅にあるエレベータで一階まで降下する。

エレベーターに近づくと、すでにボタンが押されていた。

奇妙なこともあるものだ。

エレベーターの周囲に人の気配はない。

誰かが、ボタンだけ押して急用でいなくなったのだろうか?

背筋に悪寒が走る。

何せこの時間だ。

背後に気配を感じ振り返る。

女の人だ。

髪が半分とれていて、目は虚ろ。

何か嫌な予感しかしない。

全身に発疹がある。

年は多分若い。

ブツブツとなにかつぶやいている。

その様子は、異様という言葉で表現することが適切だ。

私は、全力でその場を離れる。

エレベーター以外の脱出手段を探す。

エレベーターの周囲をウロウロしている、ということは何か目的があるはずだ。

危害を受けない補償はない。

店内に戻り、女性店員に「エレベーター以外に他の脱出経路はないか」訊ねる。

他に脱出の術はない、とのこと。

また、エレベーターのそばまで勇気を出して歩み寄る。

その異様な女の人は、まだエレベーターのそばにいる。

ボタンをねぶるように見つめ、連打する。

エレベーターが上がってくる。また、少し遠くに離れる。

所作なくブツブツと何かつぶやいている。

なんなんだ。この状況は。

もし、エレベーターに一緒に乗り込むようなことになれば、

こちらの神経が持たない。

疲れているんだけど。

眠いんだけど。
IMG_3396_convert_20101027210855.jpg
早く帰りたい。帰ってブルーローズのおはなしを観たいのに。

だが、やはり、エレベーターに乗り込む勇気が出ない。

途方に暮れたまま、時間だけがただ流れる。
事件簿 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。