邂逅2 [麻雀]

対局は、だんだんヒートアップしていった。

次局の私の先制親マン確定リーチも、大男に簡単にいなされてしまう。

私のリーチの現物でのロンアガリ。聴牌の気配すらなかった。

 結局、私の勝負手は、その大男につぶされ、その代わり安いアガリを拾うことはできるという、

なんだか釈然としない展開が続いた。またか、と思うくらい、値段のあるリーチは全て捌かれた。

 対局中、常にその大男の捨て牌は異様で、何をやっているのか、皆目検討もつかなかった。

完全にその大男に卓を支配されているような、そんな気分だ。

大男は、2000点以上の手役には振り込まず、また、3900点以上の手をあがることもなかった。

そして、リーチを打つことは、結局、ただの1度もなかった。

一発、裏有りのフリーの麻雀では、考えられないスタイルだ。

 半荘3回目に入る際、その大男がラス半コールをいれ、結局、勝負は半荘3回で終わった。

私の成績は2着、3着、3着の沈み。大男は、結局ノートップの3着、2着、2着だった。

「いやあ、遊ばせてもらったばい・・。ありがとうね。」

大男はそう屈託なく笑い、カードを現金に交換すると、雨の降る闇夜に消えて行った。

こっちは、完全に遊ばれてしまった。例えようのない屈辱が身を包む。世界が違う。完全敗北だ。

私も換金をしようと、カウンターへ行く。店員の男の子が、驚いている。

「偶然やろうか?丁度、プラスマイナスゼロだ。」

あの大男の半荘3局の終始がプラスマイナスゼロだと、いうのである。

そんな、ばかな・・・・狙ってできるはずがない・・偶然だ・・。

私は、不本意ながらあの大男について、店員に尋ねた。店員から、聞き取った情報は以下の3点。

①今回3回目の来店で、前回も前々回も、夜中にふらっと現れて、

半荘3回を打ってトントンのチャラ収支で帰ったということ。

2ヶ月に一度位のペースでの来店、とのこと。

②おそろしく高いレートの麻雀を打っているらしい、ということ。

③そして、現在、K区の麻雀道場にも出没しているらしい、ということ。

私は、店を後にして、考えていた。どうすれば再戦できるか、を。

なんだか、あの大男に子供扱いされた気がして、本当に惨めだった。

あの大男は全然本気で打ってなど、いない。高いレートってどれ位だ・・・?

私は、戦える種銭を確かめてみる。10万円くらいだ。軽々とは使えない、大切なお金。

しかも、再戦しても、全く勝てる気などしない。

だが、麻雀において、自分の遠く及ばない世界がある、ということが、あまりにも切なかった。

薄々は、感づいていた。麻雀の世界の深さは、自分ごときが、どうにかできるモノでは、ないと。

 けれど、知りたかった。その、まだ見ぬ世界を。そして、やはり強くなりたかった。

本当なら、2ヵ月後、また大男が現れるのを待てば良いだけだ。

けれど、もう1分1秒も待つことは、できなかった。

私は、10万円のうち、5万円までは、止むを得ない授業料だと考えるようにした。

ラスさえ引かなければ、500円でも半荘2回は打てる。

200円なら、5回打てる。今まで、そんな身の丈にあっていない麻雀など打ったことがなかった。

お金はいらない。とにかく、あの大男の見えている世界が少しでも知りたい。

 私は、翌日、大男を探す旅に出た。


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