雀ゴロへの挑戦③完結編

雀ゴロへの挑戦【完結編】
目の半荘が始まった。配牌を開く。案の定、カンチャンだらけのひどい13枚だ。ドラの一つもありはしない。聴牌すら望めそうにない。
私は、穴だらけの牌姿を見つめながらも、落胆せず、ひたすら食い仕掛けることに決めた。出るポン、見るチー。カン3や、カン7を食い仕掛けての3900点や2000点 いや、1000点でもかまわない。とにかくあがりが必要だと思った。
役牌とタンヤオの両天秤でいこう。その半荘はほとんどタンヤオ仕掛け、7枚以下の手牌で戦っていた記憶がある。4センチの爆弾だ。私が食い仕掛けると雀ゴロは
「よう、鳴くのう、にいちゃん?慌てる〇〇は貰いがすくないでええ?んん?」
と、もう、お約束の台詞。食い仕掛けの成果があってか、結果は少ない払いの3着。面前で局面を押さえつけるようなそんな手牌は入らなかったけれど、これまでの、半荘よりもよい内容だ。
「さあ、次いこうや」 四回目の半荘が始まろうとしている。先ほどから、私の頭に瑣末な疑問が浮かんでいた。「何故、こんなに鳴けるんだ?」相手はすくなくとも雀ゴロ。中張牌の一枚や2枚、抑えることは容易なはずだ。役牌は鳴けないのに、中張牌ばかり、こんなに鳴けるのはおかしい。そう、感じながらも、早い仕掛けで局を回す私。そして、流局時にある違和感に感じた。そして、全員の捨牌を眺め、その違和感の正体を理解した。4や、6の数字が、河に飛びすぎている。
そうか、この魔界ルールだと、値段の高い、ジュンチャンやイッツーを注視するあまり自然と123や、789での牌姿構成となるのだ。確かにこのルールでは、鳴きタンヤオに魅力がない。が、。しかし。・・ 私は、対局の途中ではあったのだけれど、しっかりした口調で店員に尋ねた。
「フリテン片あがりは、リーチだけですか?」
店員は答える。「そんなことはないですよ。」
私が、確認の意味も込めて「クイタンの片あがりも有りなんですね?」と返すと、店員は頷いた。
よし、きた。百人力だ。対局者の3人からこぼれだす、4から6の中張牌を鳴きまくっていこう。自分のツモが4倍になったようなものだ。界王拳4倍だ。ドラクエで例えるなら、バイキルトだ。これは、相当な効果があるはずだ。それからも、あえて大きな声で、鳴きまくりに鳴きまくり、これでもかというくらい鳴きまくり、他家の赤牌やドラを食い取り4回目の半荘はトップを手中に収めた。
5回目の半荘も、食い仕掛けていった。上家の雀ゴロの第1打をチー。しかもあろうことか両面ターツをチー。
「にいちゃん。ええかげんにせいや?麻雀は面前が基本やで?なんでもかんでも本当によく鳴くのう、そんなんじゃ、麻雀強くならんで?んー?」


軽口を叩く雀ゴロ。私は、愛想笑いを浮かべ、それでも、食い仕掛けを止めるつもりはなかった。なんでもかんでも鳴いている、のではない。あなたたち(雀ゴロ)を、少しでも苦しめる為、食い仕掛け続けているのだ。13枚面前の厚い麻雀では、私に勝ち目はない。けれど、4枚や、7枚のスピード麻雀でなら、なんとかなるかも知れない。麻雀はたった1000点のあがりでも、他家の満貫や跳満を潰すことができる。あがってなんぼだ。
麻雀というのは、不思議なもので、状態がよくなると、鳴くよりも先に必要な牌をツモってくるようになる。
5回目の半荘の南場の親。今でも本当によく覚えている。2456 ②③④⑧⑧二三三四の13枚。ドラは、赤三と三。赤三がダブルドラとなっている形だ。鳴く間もなく、面前でこのイーシャンテンになった。四や赤3がでれば、それでも、食い仕掛けるつもりだった。ツモ山に手を伸ばす。ツモッた牌は、赤3ソウ。赤牌特有のポッチを盲牌で確認して、三切り、ドラ切りリーチだ。予想以上の好感触なツモ。これは、ツモれる。もちろん、安め1ソウが出ても和了る。 
「ドラ切りリーチか?ああん?景気がええのう?にいちゃん?」私が、何をどうしたところで、何かしら雀ゴロは感想を述べてくれる。予想通り、というとおごがましいが、4ソウを一発でツモることができた。8000オール。ご祝儀をあわせて、半荘2回分のトップくらいのお金がかえってきた。
そのあと、結局2半荘ほど打って、卓割れとなり、店を離れた。結局、魔界ルールの恩恵を受けた和了は、わたしには訪れなかった。だが、入店時には、1000円札30枚だった私の所持金は、1万円札2枚と、千円札11枚に姿を変えていた。プラス1000円。勝っているとは夢にも思わなかった。運がよかったのだ。心地よい疲労が体を包む。苦しかったけど楽しかった。雀ゴロと打つのって楽しいな。あの死力を尽くす感じがよい。今回はうまく裏をかけた形となったけれど、次はこうはいかないだろう。最安レート千点100円で、この苦しさだ。もっと高いレートの卓には、どのようなツワモノがいるのだろうか?おそらく私の所持金と雀力では、1局すら持たないだろう。今日戦った雀ゴロは、ドラクエで例えるなら、ゴーレムくらいの強さはあったと思う。きっと竜王クラスの雀ゴロも居るのだろうなあ。(当時は私はドラクエにはまっていたので、全てドラクエに例えてしまうのは、やむなしだ。)
そんなふう考えながら、閉店間際となった下のてんぷら屋で、えびの2匹のったてんぷら定食の大を注文し、今夜の仲間達との麻雀に向けてのエネルギーを補充とした。
 麻雀にとりつかれていた、まだまだ若い頃のお話である。
私が、竜王クラスの麻雀打ちとの運命の出会いは、それからまた、10年後のこととなる。
ちなみに、友人に確認したところ、この雀荘は現在でも変わらぬルールで、営業を続けているそうだ。







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