風が吹き抜ける場所

西風莊には大きな窓がある。
西と南。

涼しい風が吹き抜ける。

5月の空。

明日のみえない自分にとって

救いの場所だった。

店内を吹き抜ける風がいつか

自分を体ごと連れ去ってくれるのでは、

いつも、そんな風に思いながら

窓辺から空をみていた。

数年後、何も持たずに

ふるさとを離れることになる。

「あなたなら、大丈夫」

別れ際に、マスターから

いただいた言葉。

なにひとつ、積み重ねてなくて

なにも持ってなくて、

自信なんかひとかけらもなくて、

そんな旅立ちの時に

果てしなく勇気の生まれる言葉を

もらった。

新幹線のなかで、

「大丈夫って、思ってくれるひとがいるなら

もしかして、本当に大丈夫かも知れない。」

不安な気持ちを振り払うように

何度もその言葉を反芻する。

「西風莊」で学んだことを大切に。

学んだこと、それは、

麻雀でもなく、お金でもなく

ただ不器用に、どんなことがあっても

ほんのすこしでも

『ひとを大切にすること』

ひとかけらでもいい

これだけは、忘れないように、と。

できなくてもいいから、

忘れないように、と。

あれから14年。

今までも、西風莊の夢をみる。

あの心地よい5月の薫風をおもう。

いつか、長い旅が終わったなら

きっと自分は、あの場所に帰るのだ

と思う。

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