出口のないファミレス [事件簿]

山のように積まれたお仕事も、手をつけなければ始まらない。

そんなこんなで、晩御飯の時間は遅くなる。

午後9時。

百貨店の4階にあるイタリア料理のレストランへ。

ミラノ風ドリアとパスタ。

食後にミネラルウォーターをクイッとやる。

さあ家に帰って、タイバニでも観よう。

そう思って店を出るとエスカレーターが封鎖されていた。

どうやら下のフロアは午後9時で閉店。

帰宅するには、4階の隅にあるエレベータで一階まで降下する。

エレベーターに近づくと、すでにボタンが押されていた。

奇妙なこともあるものだ。

エレベーターの周囲に人の気配はない。

誰かが、ボタンだけ押して急用でいなくなったのだろうか?

背筋に悪寒が走る。

何せこの時間だ。

背後に気配を感じ振り返る。

女の人だ。

髪が半分とれていて、目は虚ろ。

何か嫌な予感しかしない。

全身に発疹がある。

年は多分若い。

ブツブツとなにかつぶやいている。

その様子は、異様という言葉で表現することが適切だ。

私は、全力でその場を離れる。

エレベーター以外の脱出手段を探す。

エレベーターの周囲をウロウロしている、ということは何か目的があるはずだ。

危害を受けない補償はない。

店内に戻り、女性店員に「エレベーター以外に他の脱出経路はないか」訊ねる。

他に脱出の術はない、とのこと。

また、エレベーターのそばまで勇気を出して歩み寄る。

その異様な女の人は、まだエレベーターのそばにいる。

ボタンをねぶるように見つめ、連打する。

エレベーターが上がってくる。また、少し遠くに離れる。

所作なくブツブツと何かつぶやいている。

なんなんだ。この状況は。

もし、エレベーターに一緒に乗り込むようなことになれば、

こちらの神経が持たない。

疲れているんだけど。

眠いんだけど。
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早く帰りたい。帰ってブルーローズのおはなしを観たいのに。

だが、やはり、エレベーターに乗り込む勇気が出ない。

途方に暮れたまま、時間だけがただ流れる。
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