生き返るそのジュース。 [過去ログ]

建築中の巨大な施設が視界に入る。

展示場のようだ。

「おい、にいちゃん、こっちにこい!」

感じの悪いチンピラのようなおっさんに呼びつけられる。

ここでタルそうにすると、このおっさんとの関係が悪くなり今日一日が、地獄に変わる。

そう察した私は、心にもない元気な声で返事をする。

「はい!」

敵を作らないための処世術である。

チンピラは、続ける。

「にいちゃんは、テゴをしてくれ!

こうやって、道具を手渡してくれれば良い、頼むど!」

どうやら、私の任務は、おっさんたちのお手伝い。

なるほど、これなら簡単そうだ。

私は、チンピラに命じられた道具を手渡す。

この作業を2時間くらい続けた。

あまりの暑さに、気が狂いそうだ。

建築中の建物の中にこもった悪意のある熱気は、精神を刈り取りそうなくらい強力だ。

10時になり、チンピラが声をあげる。

「よーし、休憩にするぞ。にいちゃん、わりいけどな、飲みもん買うてきてくれ!コーヒー4本な。

にいちゃんも好きなもんを買え。おつりは、駄賃や。」

「はいっ!」

返事だけは良くなるよう心がける。

私は、1000円札を受け取り、建物の外の幹線道路沿いにある、自動販売機へヨロヨロとすすむ。

コーヒーを4本買い、ファンタを2本買う。

そのうちの一本は、その場で飲み干した。

体の隅々の細胞に水分がシュワシュワと行き届く。

生き返る。

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体が喜んでいることが、わかる。

「逃げるか?・・・」

実は、もうずいぶん前からそのことを考えていた。

おカネならある。だが、ここは、超郊外。交通の手段がない。

逃げるためには、そうヒッチハイクくらいしか方法はないだろう。

夕方5時まで、あと何時間あるんだよ!

私は、かぶりをふる。

あと2時間もすれば、お昼休みだ。そこまで、そこまでは頑張ろう。

10時の休憩もとっている建築現場。お昼休みをとらないハズがない。

私は、お使いを頼まれたコーヒーを抱えチンピラの元へ戻った。



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