真夏の一秒 [過去ログ]

ほんの軽い気持ちだった。

おカネに困っていた訳ではない。

ただ、ノリで、「やってみるよ。」と返事をした。

ただそれだけのことである。

織田 裕二似の友人が、

「簡単な仕事っちゃ。日当6000円。どう明日だけど?」

と、私に持ちかける。

20年前、

学生だった私のその夏休みは、バイトも麻雀も順調で、

毎日スーパープラネットのモーニングで、5,000円入ってくるため、おカネには、全く困っていなかった。

だが、「時間を持て余していたこと」も事実だった。

明日は、夜の10時から、朝の8時まで、やにょとローソンでのバイト。

それまで、退屈なのだ。

ちなみに、やにょとは、高校時代からの友人?で、3つの特殊能力を持つ。

①みちをよくおぼえる。
②めおしがじょうず。
③きんせんかんかくがけつらく。

社会にでて、役に立つスキルは①しかない。

さらに、物事を深く考えないため、目の前の仕事は無条件に片付ける。

特に、やにょは、のりピーが大好きなので、ノリピーの話さえしていれば、とにかく何も考えずに働く。

まあ、結果として、何はともあれ、働き者だ、ということになる。

簡単な仕事らしいし、行ってみるか。夜はやにょとのバイトで楽だし。
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どんな仕事なのか、訊ねようか、と思ったが、知らないほうがワクワクできて、きっと楽しい。

人生には、楽しいこと以外、もう訪れないのだ。

母親をうしなって以来、絶対にどんなことでも骨の髄まで楽しんでやろう。

そんなことを、考えていた時期でもあった。

翌日、待ち合わせ場所へ、出向く。

時間は、朝6時。

朝モヤの中を、ワゴン車がよろよろとこちらに向かってくる。

錆びてスムーズには開きそうもない、力でドアを開け、私は、車の中へ。

むせるような、タバコの臭いが、私を出迎える。

缶コーヒーを片手の持ったおっさんが、数人たるそうに座っている。

そのうちの風采のよくない一人が、私に吐き捨てた。

「おいおい?あんちゃん?そんな格好で大丈夫か?あんま、なめんなよ?ああん?」

嫌な予感がした。
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