カウボーイ・ブチョップ③(日常)

ブチョリーナは、店内をずんずんと歩いていく。

一直線に、生活用品売り場へ。

ブチョリーナは躊躇なく、1,500円の歯磨き粉を購入した。

そして、さわやかにレジで会計に向かい、踵を返し、本社へ。

「え?

ただのお使い?」

わたしは、がっかりした足取りで、ブチョリーナの後を尾行する。

そして、と曲がり角で、ブチョリーナを完全に見失った。

おかしい。人間が消えるはずがない。

きょろ、きょろブチョリーナを探し回るわたし。

すると、わたしの背後に、人の気配。

ブチョリーナがドヤ顔で、わたしを見つめている。

どうやら、尾行はバレていたようだ。

「いつから、尾行に気づかれていたのですか?」

わたしは、ブチョリーナに問う。

相変わらず何の返事もない。

「お買い物ですか?」

続けるわたし。

「ああ、妻に頼まれたんだ。」

ブチョリーナはにっこりと笑う。

ブチョリーナは、愛妻家だ。

もう40年以上奥様に恋をしているらしい。

けれど、もしかしたら、わたしの尾行に気づき

ミッションを中断したのかも知れない。

わたしの、「ブチョリーナのもう一つの顔」への、疑惑は消えない。

きっと、ブチョリーナの正体を掴んでみせる。

そう思いながらも、午後の業務に挑むべく、2人で並んで本社へと歩いた。
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