通勤途中のベン2 [日常]


通勤途中。

秋風が心地よい。

こんな日は、屋上あたりで寝転がりぐずぐずしたい。

けれど、勤め人にそれは許されない。

とぼとぼと会社へ向かう。

「ぶぶぶぶぶぶぶ」

なんだか、頭の悪そうな音を立てて、黒塗りのベン2が私の脇を通る。

大きな幹線道路へ向かっているようだ。

型遅れの山口ナンバーのその車は、車内で音楽をガンガンにかけている様で

外まで音漏れしている。

満員電車で「イヤホンから音漏れしているバカ野郎」を彷彿とさせて最高に不愉快だ。

ふと、見やると後輪がパンクしている。

ベン2は、FF。

前輪駆動なので後輪のパンクは、操舵性に即影響はない。

ざまあ。

そうおもい見送るベン2の後部座席リアウインドウに

箱ティッシュの姿を確認してしまった。

もしかしたら、ファミリーカーかも知れない。

ちびっこが乗っていたならどうしよう。

多分パンクに気づいてはいない。

ちびっこに罪はない。

パンクしていることを知らせるべきか・・・

もしかしたら、やーさんがでてきて

「あーん!にいちゃん、ころすぞ!あーん?」

とよたられる可能性も高い。

型遅れのベン2は、よくみるとところどころ痛んでいて

戦場でボロボロになった老兵士のようにも見える。

どうしよう、教えてあげたほうがよいのだろうか?
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