伝説の髑髏②(ビリヤード)

マサカッツ氏のスーパーカー「Y3グロリア2号」の中で、私はひたすらビリヤードについて、しゃべり続けた。ブレイクショットで、いきなり⑨番がポケットに飛び込むブレイクエース。そして、①番から⑨番を順番に全て、ポケットに入れるブレイクランナウト。マギMAX氏から伝え聞いたビリヤードの知識を、さも自分の知識としてマサカッツ氏にひけらかす。
「ほう、すげええのお」
マサカッツ氏は、私の一語一句にしきりに感心するばかり。
「①番から、⑨番まで全部入れることを、マスワリっち、ゆうんよ。マスワリが出て、初めて1人前なんよ。」
私は、超ご機嫌でしゃべり続ける。マサカッツ氏は、もうビリヤードの魅力にとりつかれているはずだ。
 そんなこんなでしゃべりあげているうちに、ビリヤード店Fの姿が見えてきた。駐車場の斜面に「Y3グロリア2号」が、小気味良く止まる。私は、ドキドキをマサカッツ氏に悟られぬよう、さも慣れたそぶりで、駐車場の脇にある店のドアに手をかける。店のドアのガラス部分から、店内の様子が見える。
 「知っている店員さんだと、いいけどな・・。」そう思いながら店のドアを静かにあける。
 コンクリート打ちつけの壁。明るい照明。カウンターの前のビリヤード台で、練習をしていた若者が、笑顔で振り向いた。
「ゆうゆうさん、こんにちは。今日は マギMAXさんは、いっしょじゃないんですか?」
 3回ほどしかまだ店に来ていない私のことを、よく覚えてくれている。まるで、もう常連さん扱いだ。マサカッツ氏には、さも私が「ビリヤード店F」に行きつけているように見えただろう。この店では、入店時にお客さんが、受付用紙に氏名を記入するルールになっている。ヒ・デッキさんは、次回来店時には、マサカッツ氏の名前を覚えてくれているだろう。
 私は、ヒ・デッキさんと二言三言交わすと、店の奥の台へ。とにかく店の奥へ。マサカッツ氏がカウンター横のカスタムキューを取ろうとしてヒ・デッキさんに注意されている。
 「あ、それはお客さんのキューなので、よかったら、これを使ってください。」そう口にして、ヒ・デッキ氏は自分の物らしきキューを差し出す。私はマサカッツ氏の代わりにこれを丁寧に断わり、マサカッツ氏を店の奥へ連れ去る。「他人のキューに粗相をしたら大変だ」私は、場キューを使うようマサカッツ氏に薦めた。
 店の奥の壁に並んでいる場キューを取り出し、かつてマギMAX氏がやっていたように、ビリヤードの台の上で、ごろごろ転がす。どういう意味なのか、よくわからないが、なんかかっこいいので、ごろご、ろごろごろ、キューを転がす。マサカッツ氏も真似をしている。多分、こうしてキューの良し悪しをはかるのだろう。そして、キューの先を見る。よく意味はわからないが、これもかっこいいので、いつもやっていた。暫く経って、それぞれの使うキューが決まった。
 ジャンケンをする。私の、ブレイク。渾身の力を込めて、手玉を突く。私の手玉は①番に当たらないばかりか、台の外に勢いよく飛び出す。私は、もう一回ブレイクを突きたいので、「①番に当たらんかったけ、もう一回ね」とマサカッツをだまくらかして、①番に当たるまで、ブレイクを突いた。
 あっという間に夢中の2時間が過ぎた。私とマサカッツ氏は、ゲーム代を払い、店から出ようとすると、ヒ・デッキ氏が、「また、来てください」と声をかけてくれた。「もちろんですとも」私は心の中でそう思い、「お疲れ様」と挨拶をして、マサカッツ氏と帰路に着いた。
 帰りの車中もビリヤードの話ばかりだった。もう、2人とも完全にビリヤードにはまってしまっていた。その後も、マサカッツ氏と暫く2人でビリヤード店Fへ通うこととなる。
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