雀ゴロへの挑戦①(麻雀) [麻雀]


今から、20年前、時代はバブルの絶頂期。その頃の私は、仲間打ちの麻雀では勝率もよくなっていて、とにかく強い人間と打ちたい、そう思うようになっていた。仲間で打つ麻雀がつまらない訳ではない。だだ、麻雀を生業としているとはどういうものか興味があったし、なによりそういう人間と打ってみたかった。その日は、深夜23:00から始まる仲間とのセット麻雀まで何の予定もなかった。なんとなくポケットに小金もある。なんとなくふわふわした気持ちで、前から気になっていた「壱萬円持っていれば遊べる」と噂の、その店に昼間から行ってみることにした。
1992年頃、当時はまだ点5の店すらなく、ピンの1.3が最低レートだったように思う。麻雀=ギャンブルという風評で、市内には麻雀クラブや麻雀サロンが乱立していた。市内でも有名な天ぷら屋の2階にあるその店の入り口には、「ピン低レート」○○荘の看板が出ている。「ピン低レート」の意味はよくわからなかったが、「とりあえず、覗いてみよう」、と入店。店員の説明によると、レートは「ピンの0.5・1」、30000点持ちの30000点返し。ゲーム代は500円。なるほど、大きなラスを引かなければ一万円で4回は打てそうだ。と安心して着席。いつも仲間内で打っている麻雀が点5.5.10だから、そんなには変わらない。
同卓者は徹夜麻雀続投中という不健康を絵に描いたような風貌の雀ゴロ2人と、ひょろっとしたメンバーさん。なるほど、負けても得るものがありそうだ。この世で雀ゴロほど、麻雀の強い生物はいないという。勝っても負けても仲間には武勇伝を報告できそうだ。とにかくなめられてはいけないと、ルール説明の詳細も「不要だ」とメンバーに断わり、「こんなもの鼻紙にもならねーぜ!」といったそぶりで、1000円札を10枚づつ纏めたズクを3つほど、サイドテーブルのカゴに放り込み、闘牌開始。実はその三万円は、全財産である。そもそも全て千円札にして持ち歩いている地点で、貧乏人確定である。だが、当時の私は千円札を裸銭で持ち歩くのが、なんとなく無頼っぽくて気に入っていた。とにかく気持ちで相手の風上に立ちたかった。「いろんな店で打ってるけど、今日は安いレートで遊んでやるよ、」と相手に牽制をかけたかった。いっぱいいっぱいの虚勢である。
よし、レートさえわかっていれば怖くはない。大丈夫だ。自分に言い聞かせる。負けたところで、金を払えば、それでOK。なんか予想外にやばい感じにからまれたとしても、今はお昼時。下階の天ぷら屋には人がたくさんいる。いよいよになれば、」大声をあげればいいさ。ちなみにこの3万円は当時学生であった私にとっては、大金である。購入予定のスーパーファミコンのソフト(ドラクエ5)や、パチスロ(当時は7枚交換が主流ニューペガサス大好き)の軍資金も必要なので、1万以上は絶対負けたくないのが本音である。
開局。私が西家スタートで、のらりくらりと自分安牌(自分にしかわからない安牌。②カンコ見えの①ピンなど)をリーチに対して強打したりして、さも「あんたの手牌は透けてるぜ」とばかりにはったりをかまして、振らずあがらずで、南2局一本場まで。25000点近くをなんとかキープしていたのは、今でも覚えている。状態もよくなかったので「次の親番で2,900位をあがって、ぶら下がりの2着でもいいや」なんてセコイことを考えていた。小物である。そんな折、親番の南家から、④を手出しの「ちっ、しょうがないのー」の台詞付きリーチ。なにがしょうがないのか理解できなかったが、ようするにやむをえない、窮したリーチということだろうか。しょうがないリーチなんて打たなければいいのに。でも、まあいい、そのまま窮していて欲しいものだ。だいたい、こういう口三味線は雀ゴロにとっては、挨拶のようなものだ。気にしない。気にしない。そう思いながら、状況を鑑みた、打牌選択へ。
20年前なので詳細は覚えてない。親番を控えたこの局の私の目的はとにかく「絶対に振らないこと」。配牌からそれを意識していた為に、手牌は安牌抱え気味のバランスのよい13枚になっている。絶対に振らない選択肢は一つしかない。「場に一枚切れている暗刻持ちの①を切る。」これならチートイもないし、100000パーセント安牌。スジの安牌なんかを手出しで切り出してなめられるのは癪だが、親には絶対に振れないし、親のリーチの現物として河に捨てられている牌で、待ってる他家がいたりしたらそれはそれで、嫌だ。やつらは雀ゴロだ。油断は出来ない。で、とにかくここは①切り。全人類の50億人中50億人がその選択のはずだ。で、①切り。まんまるな①切り。このどこまでも転がっていきそうな①ピンを三枚続けて切ってやる。ざまあみやがれ。


だが、ざまあみたのは私のほうだった。信じられないことが。リーチ者から声がかかる。「ロン。兄ちゃんスジは危ないでえ」リーチ一発チャンタ三色赤裏。24000は25500.(九州は赤ドラが3環帯、ツモ棒は1500点)
「はいー!?」「だ、だってフリテンじゃないですか?」とメンバーを問い詰める私。雀ゴロに文句をいうのは怖いので、メンバーさんに説明を求める私。すると、雀ゴロがいかにも雀ゴロっぽく口を開く。
「ああ~ん?にーちゃん、この店はリーチフリテン片あがり有りなんや。スジは気をつけんとなあ・・・」
フリテン片あがり。。。ほわい?なんなんすか?ふざけるな。聞いたことないわ!それは、リーチの現物でのロンはできないけど、現物以外の高めの牌が出たときだけロンあがりできるという、一撃必殺の恐ろしいルール。「やられた。こいつらグルか?3万円も見せ金をみせたことが、裏目にでたのか?」とも一瞬考えた。が対局中そんなそぶりはなかった。何が起こったのかよく理解できなかったけれど、ぶらさがりの2着をもくろんでいた私が、親番の前にハコテンになり、低レートの麻雀でありながら、ハンチャン1回で5000円を失ったということだけはまぎれのない事実だった。(とび賞有り)「ルール説明を聞いておくべきだった。」とほんの少しだけ後悔したけれど、同時に、「逆手にとれば、けっこういけるんじゃないか?」なんて、思いながら、ハコテンになったくせに、結構前向きに次のハンチャンへ果敢に挑む20歳の私。自分が①を切らなければ、まっすぐ攻めていれば親番のあがりが存在しなかったことなど、気付きもせずに。若さとは本当に恐ろしいものである。「ルールも理解できたし、次は大きなトップをとろう!」と、その程度にしか考えていなかった。しかし、この店の恐ろしいルールは、フリテン片あがりだけではなかったのだ。
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ウニャ

まあまあかなぁ(笑)
by ウニャ (2011-10-05 22:23) 

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