トイレから出てきた無法者は、まっすぐこちらに戻らずに、他の卓にちょっかいを出している。
今日はついてねえ、みたいな会話を交わしている様子が、遠くにうかがえた。
ついてないのは、こっちのほうだ。心の中で私はそう叫んでいた。

「早く、誰かあがってくれ」その私の満身の願いが天に届いたのか、上家から5000点棒でリーチが刺さった。「おう、5倍のリーチだ、ケケケ」
「おい、若いの、両替してくれ」上家は、5000点棒を私に投げてよこした。
たのむから余計な仕事を増やさないでくれ。
内心イライラしていたが、速やかに両替をして、ツモ山に手をのばしかけた、そのとき。。


おう、振りこんでないだろうなあ?

と私の背後より、声がかかる。
「きたーーー」奴が帰ってきた。背後に修羅の気配を感じる。
「もうその局はおまえにまかせた、振るなよ」念を押し、無法者は私の背後の小さな椅子にドカッと座った。