意識が遠くなる。

混濁してきているのが、分かる。

ふかしいも、か、しゅうまい、にでもなった気分だ。

午前11時ごろから、私の気持ちはもう固まりはじめていた。

「脱出」

である。

お昼休みの間隙をついて、トンズラをかますのである。

仮病を使う、という方法も考えたけれど、なにやらいろいろ面倒なことになると、面倒くさい。

トンズラしておいて、あとで

「すいません。体調が優れなかったので帰宅しました。」

と、申し訳なさそうに事後報告する、というのが一番よい。

もう、二度と会うことはないだろうし。

12時になる。

「をーし、飯(めし)いくぞ!」

チンピラの声が響く。

デスワゴンに積み込まれ揺られること20分、駅前のラーメン屋の前にいた。

「いまだ。!」

「逃げるのならば、いまだ!」

頭の中で、そのコマンドが呪文のように再生され続けていた。

簡単なことだ、ただふらりとラーメン屋に入店せずに、駅へ走ればよい。

心臓が、早鐘のように鳴り響いている気がした。